医療広告ガイドライン改正によりウェブサイトの監視体制強化!監視・改善の流れ
この記事からわかること
- 医療広告ガイドライン改正で変わったこと
- 監視体制が強化された理由
- 新たな監視体制と改善の流れ
- ウェブサイト制作・運営者側が気をつけるべき点
2018年に「医療広告ガイドライン」が改正され、以前は規制対象外だった医療機関のウェブサイトも対象に含まれることとなりました。
さらに、2018年の12月に厚生労働省にて行われた会議では、医業等に係るウェブサイトの監視体制の強化案が話し合われています。
強化案の実行により、どのような監視体制がなされ、改善が図られるのでしょうか?
医療機関ウェブサイトの記事執筆や広告制作を代行するうえで、知っておかなければならない「ウェブサイト監視体制強化」についての情報をまとめました。
目次
医療広告ガイドライン改正の理由は規制の判断基準のばらつき
医療広告ガイドライン改正と、監視体制強化案が出されたことにより、ホームページ改変などの対応を迫られている方も多いことでしょう。
また、これから医療機関のサイト運営に携わる方にとっても、ガイドライン違反を未然に防ぐために正しい理解が必要です。
従来は、医療機関の広告は広告規制の対象ではありませんでした。
2012年に制定された「医療機関のホームページの内容の適切なあり方に関する指針について」というガイドラインに基づき、関係団体が制限を行う程度に留まっていたのです。
しかし、医療機関の誇大広告が原因のトラブルが相次ぎ、消費者委員会から「法的規制が必要」との建議がなされました。
それを受け、2017年に医療法等の一部改正が行われ、2018年5月には医療広告ガイドラインが改正となりました。
新しい医療広告ガイドラインでは、これまでは規制対象外であった医療機関のホームページも規制対象となり、違反した場合の罰則も記されています。
参考:医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)
現在のウェブサイト上の監視体制と、監視体制強化案
医療広告ガイドラインに違反すると罰則がありますが、実際にはどのように取り締まりが行われているのでしょうか?
インターネット上の監視の流れ、また今後の監視体制の変更について知っておきましょう。
今までの監視体制
現在、厚生労働省から委託されたネットパトロール事業者により、医業等のウェブサイト上の監視が行われています。
具体的には次のような流れで、監視・通知が行われています。
- 1.ネットパトロール事業者が、検索エンジンでのキーワード検索や一般人からの通報により、審査対象となるサイトを特定する
- 2.医師や弁護士からなる「評価委員会」によりそのサイトが評価される
- 3.違反していると判断された場合、事業者からサイト元の医療機関へ通知が送られる
- 4.その後改善しない場合、その医療機関が所属している自治体へ通知が送られる
- 5.改善したかどうか、追跡調査が行われる
厚生労働省が一般事業者にネットパトロール事業を委託し、地方自治体と協力することで、これまでにない監視体制が実現しています。
しかし、この監視体制を実施していくなか、地方自治体間で規制対象の判断基準にばらつきが出るという新たな課題も見えてきたのです。
限定解除の判断基準を統一するための監視体制強化案
上記のように広告の表現を規制する一方で、「広告可能事項の限定解除」が適用される場合があります。
「患者自らが求める情報を表示するウェブサイト(広告)である」など、特定の条件を満たした場合には規制の対象にならないという特例が存在するのです。
この特定の条件を満たしているかどうかの判断は、各地方自治体に任されています。
そして現在、各地方自治体での「限定解除にあてはまるかどうか」の判断にばらつきが出ているため、規制対象の判断基準が曖昧になっています。
2018年12月に厚生労働省により行われた会議では、「医療広告の監視指導体制強化」について話し合われ、判断基準を全国的に統一するための案が講じられました。
監視体制強化のために出た案は以下のものです。
- 「医療広告協議会(仮称)」という団体(自治体・団体・厚生労働省の代表者で講成)を設け、その団体が厚生労働省や地方自治体と、医療関係団体との間に入ります。
- 医療広告協議会は双方と意見交換をし、限定解除の可否などの協議を行い、協議結果を全国に周知することで、全国の都道府県の判断基準の統一を図ります。
これにより、地方による理解や判断基準に関するばらつきを軽減し、混乱を少なくすることができると期待されています。
参考:厚生労働省ホームページ「医療広告の監視指導体制強化について」
医療機関ウェブサイト制作・ライター側が気をつけるべき点
上記の医療広告ガイドライン改正、限定解除、監視体制強化などの変更を受けて、医療ウェブサイトや広告の制作に携わる側が特に気をつけるべき点をまとめました。
下記の注意点を参考に、サイト・広告の見直しを行いましょう。
改正後の医療広告ガイドラインでは基本的に、以下のことが禁じられています。
- 患者等に事実に相違する情報を与える表現
- 適切な受診ができず、不適切な医療を受けさせる恐れがある表現
具体的にどのような表現が禁止されているのか、例を挙げながら見てみましょう。
内容が虚偽にわたる広告
「絶対~」「100%~」といった表現は禁じられています。
絶対の安全が確証された手術や施術はあり得ないので、虚偽の表現とされます。
また、治療後の通院や処置が必要な可能性がありながら「一日ですべての治療が終了」との表現をする場合も、虚偽の広告に分類されます。
比較優良広告
他の病院や診療所と比較し、自らが優良であるとの広告をすることも禁止です。
「日本一」「県内一」「No.1」などの表現が禁じられており、また「芸能人が通う」等の表現もNGです。
誇大広告
虚偽でなくても、広告を見た人に事実とは異なる期待を抱かせる広告は、規制対象となります。
例えば「○○術○万円!」と記載した下に小さく「一箇所のみの場合は○万円」と記載するように、常識的に注釈が見落とされる場合は、誇大広告とされます。
活動実態のない団体の名前を挙げて「○○学会認定医」などと記載することもNGです。
他にも「比較的安全な手術」など、比較対象がわからず曖昧な表現も規制対象とされます。
患者の体験談
患者の体験談は主観的であり誤認させる恐れが高いため、基本的に使用不可です。
誤認させる恐れのあるビフォーアフター写真等
治療の効果を誤認させる恐れのあるビフォーアフター写真が禁じられていますが、治療内容や費用について、またリスクや副作用についても正しく記載されたものであれば、使用可能となります。
医療従事者の略歴
たとえば、医師紹介のページに専門医や指導医の資格を記載する際には注意が必要です。
厚生労働省に認められた団体が届出を行ったのでない限り、専門医と名乗ることはできません。
科目
医科に関する名称において、具体的な名称で記載してはならない科目があります。
「呼吸器科」「循環器科」「消化器科」「糖尿病科」などの記載は認められていません。
歯科においても「インプラント科」「審美歯科」などの記載は禁じられています。
価格表示
自由診療については、価格表示が必要です。
これらが、医療広告ガイドライン改正により規制対象となった表現です。
従来の医療広告で多用されていた表現も禁止となっているため、すべての医療ホームページ、広告等は一度見直しが必要であると言えます。
医療広告ガイドラインの今後の動きに注目
医療広告ガイドライン改正は大きな変化であるため、いまだ対応に追われている業者が多く、限定解除に関する理解にもまだばらつきがあるのが現状です。
さらに、監視体制の強化によって、より医療広告ガイドラインの遵守が求められてきます。
変化の激しい分野ですが、今後の動きを把握しておくことで、焦らず安全にホームページの制作や運営を続けられるようにしましょう。